9月20日から21日の2日にわたって理研見学会を実施していただきました。見学会は20日の午後、榎戸研究室訪問から始まりました。榎戸研でX線観測のさまざまな応用例について紹介していただいた後、Brain Boxに移動して脳科学に関する展示を見学しました。1日目の最後には数理創造プログラム(iTHEMS)に移動して学生が自己紹介を行い、理研の研究者の方々と交流しました。2日目は朝からiTHEMSの見学に始まり、仁科加速器科学研究センターのRIビームファクトリー見学、吉田研究室訪問と続き、午後には豊泉研究室を訪問しました。自然科学各分野のフロンティアに触れ、見識を広めることができました。

(文責:福島 理・物理学・宇宙物理学専攻D2)

榎戸極限自然現象研究室

榎戸研究室では、雷という身近な自然現象から宇宙の中性子星にまで及ぶ、極限的な自然現象における高エネルギー物理学に関する研究を紹介していただきました。雷雲内では強力な電場が生じており、そこで電子が加速されてγ線が発生します。そのγ線は大気中で原子核反応を引き起こし、陽電子が生成されます。榎戸研究室では、雷雲によって発生したγ線を各地に設置した小型検出器によって観測することで、雷の発生するメカニズムの解明や、発生の予測を可能にすることを試みられていました。コガモと名付けられた検出器は、シチズンサイエンスを通して学校や会社に設置され、市民と連携したオープンな科学研究を実践されていました。多数の観測装置を用いて自然現象にアプローチする方法は、宇宙のX線観測にも利用されていました。単一で大型の観測機を用いるのではなく、シンプルで小型なX線観測器NinjaSatを複数打ち上げることで、研究のみならず教育の面においても天文学に貢献することを計画されていました。

(文責:菱田 温規・生物科学専攻M2)

画像
榎戸研

脳神経科学研究センター Brain Box

理化学研究所 脳神経科学研究センター内にある常設展示室Brain Boxを見学させていただきました。普段はあまり意識することはないような脳の仕組みや働きについて、説明パネルに加え、実際に分析に使う蛍光顕微鏡等の展示や、簡単なタスクを体験することにより学ぶことができました。特に印象的だったのは視覚順応の体験です。内容としては、ある一点を指差して離す、という動きを繰り返し行うという単純なものです。まずは普通の状態でそのタスクを行います。その後、視界が歪む特殊なメガネをかけて同様に再現しようとするのですが、初めはうまくいきません。しかし、しばらく同様に再現しようと行動していると徐々にうまくタスクができるようになりました。脳内の神経細胞であるニューロンがシナプスを介して接続されているわけですが、それらシナプスの働きが変化するという可塑性が関係しているそうです。シナプスの可塑性を、この体験によってはっきりとした形で実感することができました。

(文責:渡邉 大師・工学部情報学科B4)

画像
Brain Box.

自己紹介・活動紹介

夕刻にかけて、スライドを用いて一人10分程度の自己紹介をしました。学部生、院生、教員が混じり、研究分野だけでなく学部や国籍も違う人もいたので、非常に多様な学びがありました。京都以外でも研究で活躍する学生や、学部生のうちから精力的に活動している方もいて刺激的でした。また途中で夕食休憩を挟んだ際は、年齢や分野に関わらず色々な人と会話ができ、普段関わることのない人たちと良い関係を築けました。

(文責:岸広登・数理科学系B3)

画像
自己紹介

iTHEMS

一日目理研についたら、ある討論部屋につれられました。一面の壁が黒板になっていて、テーブルは自由自在に組み合わせる明るい部屋です。「ここで議論できれば最高」と入った瞬間ふっと思ったのですで。ここはまさに理研における数学の中心地、iTHEMSということはその時は知らなかったです。
 数学は数学者がすること、生物は生物学者がすることというの普段のイメージと違って、理研は「数理を軸とする分野横断的手法により、宇宙・物質・生命の解明や社会における基本問題の解決を目指す」という斬新な理念に掲げている。科学全体をひとつの有機体にみなし、分野に断らず適した道具をすべて使い、各専門分野が著しく分断してきた現代に過去の博学者の精神をよみがえらせようと大きな野心がみられます。いまはほかのところではなかなか見れないが、このような学際的な研究こそが真の研究のあるべき姿だと理研を訪問した後身をもって感じました。

(文責:公奕(Kung Yi)・数理科学系B3)

画像
iTHEMS

RIビームファクトリー

理研出張の2日目、我々はRIBFを見学させていただきました。正式名称はRIビームファクトリーで、RIとは放射性同位体の意です。本研究施設で新元素の113番元素ニホニウム(Nh, nihonium)の発見がなされ、命名権を得たことは、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。本施設では地下室に収容された実験設備で、ウランまでの全元素の不安定原子核を発生させ、それらの性質を調べることで、原子核の構造と反応について研究が行われていています。新たな原子核モデルの構築や元素の起源の解明のような基礎研究や、RIビームを利用した新産業の創出への貢献が可能となっています。2021年までに、本研究施設は187個の原子核を発見してきましたが、いまだにウラン合成仮説(超新星爆発時にある原子核群が瞬時に合成し、β崩壊したことでウランまでの重元素ができたという仮説)の検証には至っていません。しかし、これから計画されるRIBF大強度化によって生成可能な原子核の範囲が増大することで、同仮説の世界に先駆けた検証が可能になるそうです。地下室の設備も見学させていただきましたが、想像を遥かに超える大規模な設備で驚かされました。特に、装置の一つであるSRCという加速器は総重量8300トンで世界最大、世界最強の加速器だそうです。

(文責:一色竜一郎・生物科学専攻B3)

画像
RIBF
画像
RIBF2

環境資源科学研究センター

環境資源科学研究センター(CSRS)では,主にケミカルバイオロジー研究に関する説明を受け,施設見学をさせていだだきました.ケミカルバイオロジーは化学物質を出発点として生命について研究する分野であり,そのためには化合物ライブラリーの整備や化合物による生体活性の評価システムが必要だと聞きました.CSRSの施設では,化合物を生成する菌の培養設備や保管庫,物質を解析するための機器など生物的・化学的な実験室の様子を見ることができました.生体内の標的を活性化させる化合物を探索するための効率的な化合物スクリーニングの方法も研究されているようで,私の研究範囲に含まれる最適化理論などの応用対象として興味深かったです.

(文責:竹田 航太・数学教室 D1)

画像
環境資源センター

豊泉数理脳科学研究室

理化学研究所の豊泉研究室にお邪魔し,脳神経活動とモデルについての研究についてお話しいただきました.
大きく分けて三つ
1.    最適化理論で脳の学習則を予測する
2.    シナプス体積ダイナミクスのモデル
3.    脳活動の波による学習
というトピックについて脳科学研究の歴史から現在の最先端の研究に至るまで,お話しいただきました.
90年代に測定された生理学的実験のデータを,最適化理論で理論的に再現できることが興味深かったです.さらに,波による学習によって,脳の活動がより強化されるといった研究紹介では,一見ノイズのように思われる情報が重要な役割を果たしているというお話を伺い,大変興味深いものでした.

(文責:伊東 杏花里・生物科学専攻 M1)

画像
豊泉研究室

対面での学術指導

理研ツアーの翌日、Jeffrey Fawcett先生からの対面学術指導を受けました。今回の対面学術指導では、東南アジアなどの地域から日本へのそばの伝播における進化過程に焦点を絞っていました。具体的には、GDRなどのゲノムバンクから、ソバ属であるFagopyrumの数種の植物が持っているセリン/スレオニンキナーゼのアミノ酸配列を入手し、MAFFTなどのツールでアライメントし、分子系統樹を作成しました。今回の学術指導を通して、Ubuntu OSに関する使い方と、バイオインフォマティクスのスキルに関するトレーニングができました。以前はオンラインによる指導でしたが、今回は初めての対面指導であり、Jeffrey Fawcett先生と直接的に話し合うことができ、さらにコンピューター面で困ったときにも、すぐ対応して下さりました。最後では、京大スパコンを用いた分子系統樹の作成について、今後の予定として企んでいました。

(文責:Yan Xi・生物科学専攻 M1)